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Spring ephemeral

Spring ephemeral(スプリング・エフェメラル)は、春先に花を咲かせ夏頃まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称。キンポウゲ科のイチリンソウや福寿草、ユリ科のショウジョウバカマやカタクリがその種にあたります。
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カタクリ(片栗) 学名:Erythronium japonicum Decne              英名:Katakuri  (写真はWikipediaから)


去年の今頃は、これからこの蔵をどうしようか?呆然としつつ、とりあえずはここに家族3人が泊まれる状態にすることが先決…な毎日だったので、当然、山に行くことはできず、春は娘と妻が抱えてやってくるもの…といった感じでした。
あれから1年…。道具と材料と荷物で未だ片付く気配のない作業場の中で途方にくれつつも、薪集めと材料探しという理由を付け、山に行くことが多くなったぶん、春をカレンダーの日付では無くて、感覚として感じることができるようになった…このことだけでも大きな前進ってことにしようと思っています。

このところよく出かけている、長野市街地からほど近い旭山の北側の森。
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この森にカタクリが群生しているらしいという話しを聞いたのは今から随分前、東京から帰省したある時。母からにその話しを聞き、カタクリの季節ではなかったけれどその森に行ってみると、そこは私が子供の頃入り込んで遊んでいた場所には間違いない…けれどそこには全く印象の変わった森だけがありました。
山の中腹にある旭山観音(今はもう無いけれど…)へ続く山道へと登り始める手前、森の奥へと続く細道を抜けて行くと、突然ぽっかりと開けた畑があって、ちょうど真ん中あたりにはおおきな柿木…というのが私の幼少の記憶。
けれど、柿木もその畑も全く無くなったそこは、まるで夢でもみていたかのごとく、すっかり森へと変わっていたのです。
その間、およそ30年。私が記憶した直後ぐらいに畑の役割を終えたらしいその場所は、その後30年の歳月を経て森の姿へと戻りつつあります。

落葉広葉樹林が広がるこのあたりのカタクリは、3月の後半から4月の初旬に地上に現れて花を咲かせ、その後、夏前には葉や茎は枯れ、その姿は次の春になるまで見えなくなってしまいます。この花の種子にはアリが好むエライオソームという物質が付いているらしく、この匂いに誘われてアリが巣に持ち帰ることによって生育地を広げるのだそうです。

詳しいことは解かりませんが、このあたり…旭山全域は落葉広葉樹林帯ですから、そこには少なからずカタクリも自生していたはず。そんな森の中でも、かつて畑として開墾されていたこのあたりは日当たりも良く、おそらくそこは、アリにとっても居心地の良い場所であったはずで、アリの一大集落となっていたのかもしれません。そう想像すると、その後、畑として使われなくなってからもアリたちはそこに暮らしていたであろうし、春になると周辺のカタクリの種子をひろい集めてはセッセと巣に運び入れ、そうした結果、このあたりにカタクリは群生するようになったのだと思います。

私たちはカタクリのようなSpring ephemeralによって春を感じ、自然の素晴らしさ、不思議さを感じたりすることができますが、私には、こうした美しい様が、落葉広葉樹が広がる森とアリと人の共同作業によってつくられているということこそが大きな驚きであり、感動でもあります。
「自然」という定義や解釈は難しいのかもしれないけれど、私たち人間も自然の美しさをつくる役割の一旦を担える…ってことを感じられる場所があるということは、これからの私たちにとっての大きな可能性となる…と強く思うマゼコゼ暮らし2回目の春です。

小池マサヒサ記。

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by cafe_mazekoze | 2010-03-21 10:52 | 森とか山とか | Comments(0)
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